レビュー
「DEATH STRANDING 2: ON THE BEACH」レビュー
2025年6月23日 21:00
インフラ復旧に命を燃やせ! 国道だけでなく、モノレールも復旧の対象に
大陸の要所を繋ぐ「国道」はもちろん本作でも健在だ。マップ上の国道端末に大量の資材を投入することで特定の場所に道路が出現する仕組みはこれまでと同じで、これを復旧させることで配送における大きなインフラとなる。
復旧のための資材は、前作では敵の拠点を襲撃して奪うスタイルが主だったが、本作においての資材は「採掘場」で入手することが基本となるようだ。採掘場は大陸の数カ所にあり、フィールドやBTの討伐時に入手できる「カイラル結晶」を消費することで採掘場ごとに違う資材を手に入れられる。
一定量のカイラル結晶を使うとかなりの量の資材を入手できる。そのため、国道復旧も簡単なように思えるが、国道の各端末と採掘場の場所がマップ上の絶妙な場所に配置されたレベルデザインが施されていて、多くの場合長距離の資材運搬が必要になるなど、楽には復旧できないのがもどかしくも楽しいところだった。
なお今回の国道にはレベルの概念もあり、ゲームを進めてさらに資材を投入すれば、屋根付きでより高速で走れるようになっていく。筆者は今回のプレイではそこまで手が回らなかったのだが、SSSによって共有されたレベル2の国道の一部分を見ることはできている。国道の復旧に命を燃やしたプレーヤー諸氏にはさらなる目標が増え、やり甲斐のある作業となるはず。進化した国道の完成を目指して大陸を行き来していただきたい。
もう一つのインフラ、「モノレール」は本作で初登場の鉄道で、こちらは国道とはひと味違い、列車に大量の物資や車両、サム自身を乗せて移動することができる。大陸にはいくつかの路線があり、配送センターや大型の居住施設、そして採掘場が駅となってそれらを繋いでいる。乗車は駅で行なうのが基本となるが、サムだけならレールの端末からジップラインで乗ることができるのもポイントだ。サムが「建設装置」を使って建てるジップラインと端末を接続することもできるので、レールを経由したジップラインのルートを構築するのも楽しくなりそうだ。
複数の敵に対し、単独で挑むサム。正面から戦うか、静かに敵を回避するかはプレーヤー自由だ
プレビューでも触れた強化された戦闘要素については、ゲームをある程度やり込んでみると、武器の選択肢がいくつか増えただけでこんな面白くなるのかという手応えを感じられた。厳密なTPSではないものの、ヘッドショットで大きなダメージを与えらたり、遮蔽物を利用して敵の攻撃を避けたりと、お約束の戦い方も通用する。これはDHVマゼランなどで行なえる「VR訓練」の豊富なメニューから身に着けられるようになっている。
戦闘は「DS」のゲームデザインの中で作られているので、配送の荷物を背負っている場合が多く、武器自体も荷物であるため、これらが戦闘時の負荷になってしまうこともある。戦闘任務に向けてゴリゴリに装備を固めると荷物が増えるという、本作ならではのジレンマも発生するのだ。
その仕組みをフォローするのが、バックパックの荷下ろしだ。持っている荷物が多いと重量による負担がかかり、ステルス行動の際に見つかりやすくなるなど、デメリットが大きい。デフォルト設定なら△ボタンを長押しすることでバックパックをその場に置いて身軽な状態で行動できるようになるのだ。
バックパックを置いたときのデメリットとしては、持てる武器が限られてしまうこと。サムには肩と両足に荷物を接続するハーネス(「スーツ固定部位」と呼称)があり、バックパックを下ろしているときは最大4か所のハーネスと、武器などを固定するツールハンガー、そしてハンドガン用のホルスターと、最大で6種の武器しか持てなくなり、荷物などを見つけてもその場で拾えないという弊害も発生する(ハーネスが空いていれば小さな荷物は持てる)。また運が悪いとバックパックを泥棒されてしまうハプニングが発生することもあるので、それらを念頭に行動することが必要となる。
武器にはアサルトライフルやショットガンなどの銃器、グレネードなどの投擲武器の他、敵を捕縛する「ボーラガン」、地面に設置してカイラル結晶を発射する「カイラルショックキャノン」、ドローンのように空中に浮かんで敵を自動射撃する「フロートセントリーガン」、バリケードのように地面に立てることもできる盾「シールド」など、本作ならではの個性的な武器も登場。それぞれで攻撃対象も異なるので、依頼内容や配送ルートによってどれを選ぶか迷うことも楽しみの一つとなるだろう。
サムを襲う敵は「バンデット」、「ブリガンド」、「武装サバイバー」といった人間達、霊体のBT、「ゴーストメック」なるロボットに分類され、対象によって効果のある武器も異なる。最も使いやすいのは「MP(Multi-Purpose=多目的)バレット」を搭載した武器で、人間に使っても殺傷することがなく、対消滅(ヴォイド・アウト=死にゆく人間がBTと接触して起こる大爆発)の心配もない。武器によっては殺傷能力を持つ強力なものもあり、それらは対BT/ゴーストメックに使用することとなる。
正面からの戦闘が苦手な人に向けて、ステルス行動に関連する要素も充実した。静音に特化した武器やブーツ、しゃがんだ状態で素早く移動できるアクティブスケルトンなどの装備品のほか、サムが隠れられるポスト、敵の居場所を事前に把握できる監視塔など、設備にもステルス行動を補助するものが存在する。このあたりはかつてステルスゲームを世に広めた 小島監督の作品らしいプレイフィールを感じられるはず。なおステルス行動はBTにも有効で、しゃがみ歩きと「息止め」などを駆使してBTに見つからないように座礁地帯を突破する手段は筆者も多用していた。
それでもやはり戦闘は苦手という人のために、難易度設定は4段階用意されていて、プレイ中にいつでも変更が可能だ。ゲーム進行特化の最も易しい「Story」なら、敵から受けるダメージは最低かつ敵に与えるダメージは最高(反面、依頼達成時の評価は低めになる)という設定もあるので、腕に合わせて試してみてほしい。
サムワン同士やNPCとの繋がりも見える、進化したソーシャル・ストランド・サービス(SSS)
自身と他のプレーヤーとのオンラインでの“繋がり”をシステム化した「ソーシャル・ストランド・サービス(SSS)」についても触れておこう。今回のゲームプレイではプレビューのときと同様、テスト用のネットワークサーバーに接続され、テストプレーヤーが建造したフィールドの建造物や落とし物、国道に投入した資材量などゲームの進行の一部がオンラインで共有される、製品版に近い仕組みを体験している。
今回のSSSはそれだけでなく、互いの施設などを何度も利用して「いいね」を贈りあった回数などで、特定のサムワンと親密度が上がると、「ブリッジリンク」からその相手のプレイデータなどを見られるようになった。ゲーム進行に直接影響はないが、どんな相手と繋がっているのかを眺めるのはゲーム中のちょっとした息抜きや目標にもなるだろう。
またSSSはゲーム中のキャラクターとも繋がっていて、依頼完了やイベントの後にお礼のメッセージが届いたりする演出もある。グループSNSのように他のキャラクターがコメントを挟んでくることもあり、キャラクター相互の繋がりも楽しめ、物語上では見えない彼らの性格を楽しめるようになっている。
小島監督の“好き”と“苦労”がエンターテインメントに昇華された大傑作。もう2周ぐらいは飽きずに楽しめそうな予感がする
この「DS2」を改めてラストまで進めた感想としては、前作で確立した移動と配送を楽しむ「DS」ならではのゲームデザインの大幅進化を味わえたのと同時に、小島監督が自身の“好き”と“コロナ禍における心境”を全力でエンターテインメントへと昇華しようとするモチベーションを強く感じられた。
ゲームの進化についてはこれまで述べた通りで、荷物を運ぶだけでなく、そのためのインフラ構築も実に楽しいものだ。小島監督はプレビュー時のインタビューで「『どうぶつの森』が好きな人は『DS』シリーズも好き」という話をしていたが、目的のために環境を整えていくゲームデザインは「Minecraft(マインクラフト)」に近いようにも思える。製品版発売以降のオーストラリア大陸がどんなふうに作られていくのかも楽しみの一つとなるだろう。
ゲームのメインストーリーに関連する見せ方や演出は映画そのもので、全編において見応えがあるものに仕上がっていて、小島監督のセンスを改めて体感することができた。シナリオには小島監督が本作開発中のパンデミックで味わった艱難辛苦が見え隠れし、それを乗り越えようとする想いも併せて描かれているような気がした。
ハードなメインストーリーが描かれる一方で、コミカルな演出が要所に盛り込まれているのも小島監督の作品らしいところ。その筆頭となるのが、今回のサムの相棒となるドールマンで、コメディリリーフ的な彼との会話は、長い道のりを踏破する上での癒しとなる。演じる杉田智和さんの声質や演技力も、その魅力を倍増している。
また楽曲や著名人、企業などとのコラボは、現実世界と「DS」の世界と上手く結びつけていて、出会うたびに驚きと感動があった。特にサムが温泉に入ったときの演出は筆者にとって涙が出るほど感動できるものだったので、温泉を見つけたらぜひ□ボタンを長押しして湯に浸かっていただければと思う。
ゲームを一通り終えた筆者ではあるが、世界中のサムワンと繋がれる6月26日以降の「DS2」の世界は、テストサーバーを介したものとはまったく違ったものになると確信している。プレビューから数えて3度目となる筆者とサムの旅路は、これまで選ばなかった選択肢のもとに進めてみようと考えている。
(C) KOJIMA PRODUCTIONS Co., Ltd. 2022 All Rights Reserved