レビュー
「DEATH STRANDING 2: ON THE BEACH」レビュー
エンディングまで進めてわかった「DS2」の奥深さと、小島監督が込めた想いを綴ろう
2025年6月23日 21:00
- 【DEATH STRANDING 2: ON THE BEACH】
- 6月26日 発売予定
- 価格:
- 8,980円(スタンダードエディション)
- 9,980円(デジタルデラックスエディション)
- 31,980円(コレクターズエディション)
小島秀夫監督率いるKojima Productionsが開発を手がけるプレイステーション 5用アクション「DEATH STRANDING 2: ON THE BEACH(デス・ストランディング2)」(以下、DS2)が、6月26日にソニー・インタラクティブエンタテインメントから発売される。
オープンワールドを歩いて荷物を配達することをゲームへと昇華し、世界中の“サムワン”(“誰か”と主人公の名前をかけたプレーヤーの呼称)から賞賛された「DEATH STRANDING(デス・ストランディング)」(以下、DS)の発売から6年。北米大陸を歩いて繋いだ主人公「サム」のその後を描く本作は、“我々は繋ぐべきだったのか?”という前作を否定する衝撃のテーマが設けられた続編となっている。
弊誌では5月に開催されたプレビューイベントにて、4日間で約30時間ゲームを進めたプレイレポートをお届けした。本稿ではそれを踏まえ、SIEより提供いただいた製品版のコードを使用してゲームをプレイし、プレビューでは触れられなかったストーリー概要やキャラクター設定、あるいはゲームを進めたことによってより深く理解できたゲームシステムについて触れていきたい。
なお今回のレビューの執筆条件は“メインストーリーの終了”、つまりエンディングまでのゲームプレイで、筆者も55時間4分43秒かけてゲームを終わらせている。もちろん本稿もネタバレは極力ないように心がけているが、プレビューのときよりも深掘りした内容であるため、ゲームシステムなどについては何かしらのネタバレに繋がってしまうことがある可能性もあるので、何卒ご留意いただきたい。また使用しているゲーム画面の画像の一部にはゲームの性質上、プレーヤーIDやアイコンなどが写っているため、該当の画像には修正を加えている
前作から11か月の時を経て、“伝説の配達人”サムが仲間達とともにカイラル通信の繋がっていない新たな地へと向かう
死者があの世から座礁してくる怪現象「デス・ストランディング」により壊滅したアメリカを「カイラル通信」で繋ぎ「United Cities of America(UCA、アメリカ都市連合)」として再見させた、サム・“ポーター”・ブリッジズ。長い旅を旅をともにしたBB(ブリッジ・ベイビー)のルーを解放し2人で生きていくことを選んだ彼は、UCAから姿を消してしまう。
本作はそれから11か月が経過したところから始まる。サムはBBポッドから出て少し大きくなったルーとともにメキシコの地でフリーのポーターとして静かな生活を送っていた。そのサムの元に、北米でのサムの協力者だったフラジャイルが来訪する。彼女の依頼でメキシコのカイラル通信を繋いだことを機に発生した事件をきっかけに、サムは彼女が設立した民間の配送組織「跳ね橋部隊」と合流、メキシコに突如出現した「プレート・ゲート」を通って、新たな舞台オーストラリア大陸でカイラル通信を繋いでいくこととなる。
実はこのあらすじ、本作で備わった機能「コーパス」を見ながら執筆している。これは本作のあらすじや用語、登場人物、装備品、車両、敵キャラクター、システムなどをカテゴリごとに分類してわかりやすく表示する、その名の通り「DS2全集」といった機能だ。進行中に関連するワードが出てくるとコーパスがポップアップされ、その場で確認もできる親切設計で、ゲームの進行によって内容が逐一アップデートされる。ネタバレにも配慮をしつつ、本作と前作における難解な用語や世界観を網羅している。
プレビューの記事でも紹介している前作の振り返りテキスト「Story of DEATH STRANDING1」とともに、作品を取り巻く世界観はこのコーパスのもと、確実にフォローをしてくれる。ゲーム本編のチュートリアルやリアルタイムで表示されるTipsなどもしっかり作り込まれていて、単独でもプレイできる作品として完成しているものの、物語は完全続編で前作から引き続き登場する人物も多く、可能であれば事前に前作をプレイしておくことを勧めたい。また本作が前作より大幅な進化を遂げていることから、後から前作をプレイするのも個人的にはあまり推奨しない。
「DS2」の物語はサムと跳ね橋部隊の仲間達を中心に展開していく。前作にもサムを取り巻く人物は多数登場したが、基本的には彼1人を中心とした物語だった。対する今作は跳ね橋部隊の拠点となる船「DHVマゼラン」には個性的なDOOMS(能力者)達が集結し、彼らに関するエピソードも逐一語られ、より奥深い物語が描かれていく。
“接触恐怖症”だったサムが、家族のように振る舞う仲間達のおかげで自然に彼らと打ち解け、あるシーンでサム自らが仲間の肩をポンと叩いた描写には思わず目頭が熱くなってしまった。また多くは語らないが、特に劇中中盤で合流する「トゥモロウ」の存在には最後まで注目していただきたい。
??『DEATH STRANDING 2: ON THE BEACH』Game Premiere 速報
— KOJIMA PRODUCTIONS (@KojiPro2015)June 9, 2025
エル・ファニングが演じる、トゥモロウの初公開カットシーンはこちら??
YouTube配信(アーカイブ)??https://t.co/QuS1xCqxwd#DeathStranding2#デススト2#PS5pic.twitter.com/J7kVCDCXPz
本作でサムと繋がる人物は仲間達だけではない。以前とは異なる姿でサム達への復讐に執念を燃やす「ヒッグス」、サムのピンチをたびたび救う赤い色の巨人「レッドサムライ」、PVなどで前作のクリフのような存在として印象を残した「ニール」と「ルーシー」、そしてオーストラリアの各所でサムを迎えるプレッパーズ達の多くにもそれぞれのドラマが用意されている。後述する「SSS(ソーシャル・ストランド・サービス)」では、通りすがりのポーターからのメッセージが来ることがあるなど、本作にはいわゆる“その他大勢”の人物は存在しないのである。
舞台は広大なオーストラリア大陸へ。カイラル通信を全土に繋ぐため、大陸の西側から移動を開始する
ゲーム本編は、大陸の住人などから配達の依頼(オーダー)を受けたサムが荷物を可能な限り傷つけないように運ぶ、前作のゲームデザインを踏襲している。
実際にサムを操作してみると、地形、サムが背負った荷物、装備品、移動手段、歩行時の速度などはすべて物理計算されている手応えを感じられる。それに加えて昼夜の概念や天候が引き起こす災害、局地的地震「ゲート・クエイク」など、環境とリンクしたハプニングが発生することにより、移動と配送をこなすゲームとしてのクオリティは格段に上がっている。
それを顕著に感じられたのは、サムの能力が低く装備も整っていないメキシコやオーストラリアの序盤だ。筆者はプレビューのときにある程度ゲームを進めたサムの操作を体験していたこともあって、その調子で序盤を移動すると、荷物を持ちすぎたゆえ地形に足を取られて転んだり、川をジャンプしようとして距離を見誤って落水したり、肝心なところで梯子などのアイテムがなくなったりして、新地での洗礼を改めて味わうこととなった。実際に初めてプレイするときはもう少しじっくり歩みを進めることになるとは思うが、直前まで前作をやり込んでいたりすると痛い目に遭う可能性もあるのでご注意のほど。
当然ゲームを進めていけば装備や車両などが充実し、サム自身の力もついてくるので、移動自体の苦労は減っていくものの、環境の大きな変化や新たな敵の登場、ミッション内容の複雑化などにより全体のバランスは取れているように感じられた。
主な舞台をオーストラリアに選んでいるのも評価したいポイントで、大陸の特徴をプレイフィールドに凝縮している。前作では見られなかった生物が生息し木々が茂る自然は広大で美しく、そして険しい。その多くは荒れ地だが、砂漠や森林、巨大なタールの湖などもあり、雪山は大陸の1/3程度を占めている。昼夜の概念があることにより、訪れる時刻や天候によってその印象が大きく変わるのもいいところだ。
BT(Beached Things)が出現する「座礁地帯」や敵となる人間の拠点も多数あり、前者は状況によってその場所が変わることを確認できた。壊れやすい荷物を運んでいるときに限ってBTと遭遇することがあるのはある意味本作のお約束と言える。
また大小のタール溜まりの周辺には「カイラル・クリーチャー」という集団で動き回る生物が生息していることもある。彼らは個体は弱いが、近づいたり踏み潰したりすると集団で襲いかり、サムや荷物、そしてバッテリーにダメージを与えてくるのが脅威となる。
そしてフィールドには、あちこちにオーストラリア特有の動物達も生息している、というよりは取り残されている感じで、これらを保護することもサムの役目だ。プレビュー記事では“サム自身が保護区まで運ばなくてはならない”と表記したが、忙しいときは各所の端末から「配送荷物を託す」ことで、自動的に動物保護区に送ってもらえることが判明した。自分で保護区に届けるほうが愛着が湧くのは間違いないが、背に腹は替えられないので、そこはサムワンの判断にお任せしたい。ちなみに筆者の保護区には現在44匹動物達が生活していて、配達に疲れたときの癒し空間となっている。
なお動物達は、車両と激突したり、間違って攻撃してしまったり、長時間時雨に晒されたりすと、死んでしまうこともある。万が一そのような悲しいことが起きたときは、それに関する演出は必ず見てほしい。
移動と配送のゲームデザインが洗練され、自由度の高い配送ルートを模索できる
オーストラリアでの困難な道のりに対し、サムが使用するアイテムや設備、インフラは本作で大きな進化を遂げている。サムのHPとなる血液を補給する「血液袋」は大型のものが登場し、「ブーツ」、「グローブ」、「アクティブスケルトン」などの装備品は機能が細分化され、用途やプレイスタイルによって使い分けられるようになった。
車両にはトライクタイプの「トライクルーザー」とトラックタイプの「ピックアップオフローダー」があり、これらにもカスタマイズ機能が用意されている。前者は走行スピードと水上走行という特別な機能に特化されているため、カスタマイズはバッテリーの追加程度となるが、後者は速度が遅めなぶん積載量の多さとカスタマイズの幅の広さが特徴で、武器や装甲を取り付ければ戦闘車両にもなりうる。なお車両のカスタマイズができるのはプレーヤーが作成したものに限られ、SSSを介して共有される他のプレーヤーの車両には行なえないため、必然的に自分が作った車両には愛着が湧くはず。少なくとも筆者はそうで、入手時から最後まで同じ車両を大事に乗り回していた。
こうした装備等の選択肢は、配達の成功による依頼者との「親密度」が上がることで増えていく。親密度を上げなくてもゲームは進められるが、よりたくさんの依頼をこなすことで後々の移動が楽になるというわけである。進行においてどんな選択をするかはプレーヤーの自由だ。