【特別企画】
「ドラッグ オン ドラグーン2」本日20周年! 絶望を希望へと繋げた、ノウェとマナを中心にしたストーリー
2025年6月16日 00:00
- 【ドラッグ オン ドラグーン2 -封印の紅、背徳の黒-】
- 2005年6月16日 発売
スクウェア・エニックス(開発元キャビア)より2005年6月16日に発売されたPS2用アクションRPG「ドラッグ オン ドラグーン2 -封印の紅、背徳の黒-」(以下、「DOD2」)が、本日2025年6月16日で発売20周年を迎えた。
本作は「ニーア レプリカント/ゲシュタルト」、「ニーア オートマタ」などで知られる鬼才・ヨコオタロウ氏の作品「ドラッグ オン ドラグーン」(以下、「DOD」)の続編。「DOD」の18年後の世界を描いた物語となっており、「DOD」のEエンドが「ニーア レプリカント/ゲシュタルト」へとつながったのに対し、本作は「DOD」のAエンドをベースにさらにBエンドの要素が加わった物語となっている。なお、ヨコオ氏はチーフデザイナーとして本作に関わっている(メインシナリオには関わっていない)。「DOD」の各エンディングについては、「DOD」発売20周年で書いた以下の記事を参考にしてほしい。
本稿では、赤目の病にかかってしまった筆者が、「DOD2」について振り返りたい。なお本稿はネタバレが多いため、「これからまだやるかもしれない」という予定のある人は、注意してほしい。
「ニーア」シリーズとは直接的な関係はない
「DOD」が、「ニーア」シリーズに連なる作品だということは知っている人も多いと思うが、「DOD2」は前述の通りAエンドとBエンドから派生している作品なので、現在の「ニーア」シリーズに直接関係する作品ではない。言ってしまえば、一番素通りしても問題のない作品である。しかし、登場人物などは相変わらずとても魅力的(変質的?)なキャラクターたちばかりで、しかも前作の主人公であるカイムなども登場するので、前作「DOD」が好きだったという人は、ぜひプレイしておきたい作品となっている。
ストーリーは、英雄カイムとドラゴンのアンヘル、そしてその仲間たちの活躍によって世界の崩壊をまぬがれた18年後から始まる。
封印は、英雄ヴェルドレによって結成された封印騎士団により守られていた。そして物語は、騎士団に所属する18歳の少年「ノウェ」と、人々から聖女と崇められる女性「マナ」の出会いから始まる。なお、マナは24歳にまで成長し、前作で世界を破滅寸前に追い込んだ記憶はきれいさっぱり失っていて、今作では純粋な心となっている。
ノウェはドラゴンに育てられ、竜語を話すことができるという特性を持っている。また、ノウェの出生には「DOD」のBエンディングが深く関わっているのだ。ノウェは、イウヴァルトとフリアエの亡骸が「再生の卵」によって融合して誕生した存在で、耳にはイウヴァルトのピアス、腕にはフリアエのブレスレットをつけている。
ノウェを育てたドラゴンは、「レグナ(ブラックドラゴン)」。前作「DOD」でイウヴァルトと契約していたドラゴンだ。
本作のヒロインであるマナは、世界を滅亡させようとした贖罪のために旅へ連れ出したカイムを刺して逃亡しようとするが失敗し、崖下に転落して記憶を失っていたところを拾われた。封印騎士団の圧政に苦しむ人々を救うべく、封印を壊す旅に出る。しかし、それが世界を危機に晒すのだった。
ほかに、先代女神フリアエの死亡により選ばれた今代の封印の女神でノウェの幼馴染であるエリスや、前騎士団団長オローの部下でオローの養子であるノウェにとっては兄のような存在のユーリックなどと共にストーリーは進んでいく。
前作の主人公カイムは42歳になっており、女神フリアエの代役として最終封印となったアンヘルとは離れ離れに。戦争の元凶であるマナを連れて各地を放浪していたが、ドラゴンの力に恐れをなした神官長ヴェルドレのアンヘルの封印制度を改変したことに動揺し、マナに左目を奪われ、隻眼となった。
本作の3年前に、封印の改変を阻止するべく神殿を襲撃して、ヴェルドレやオローらを含め、その場に居合わせた多くの人間を惨殺する。以来、アンヘルにかけられた封印を解く術を求めて各地を彷徨っている。
また、前作にも登場したマナの双子の兄であるセエレも登場。6歳のときにゴーレムと契約し、その代償で時間を失ったため、18年後でも6歳のままの姿で登場する。
ヴェルドレの死後、遺言により神官長の職に就いた。肉体は成長しないが、精神は成長している。
他にもまだまだサブキャラクターが存在するが、ここには書けない「ピー(規制音)」で「ピー(規制音)」なキャラクターだらけで、彼らに関する物語を読み進めていくだけでおもしろい。
一方でメインストーリーは少々賛否両論分かれるところではあり、マナが記憶を失くしたとはいえ正義感の固まりのようなキャラクターになったのも理由らしい理由が語られていなかったり、ノウェはマナにひとめぼれしたした結果、マナの背中を追いかけていくキャラクターになっており、前作にあった毒の塊のような雰囲気は、なりを潜めてしまった。
とはいえ、「DOD2」は一本のゲームで見た際に、王道RPGとしては良くできた作品だ。しかし、前作があまりに異形すぎたために、前作の衝撃を再び求めたファンの間では少々がっかり感があったのだ。そのため、本作は「DOD」から一部の設定やキャラクターを引き継いだボーイミーツガール的な作品だと思ったほうがいいだろう。
また、カイムとアンヘルのその後も描かれており、このイベントはファンの間でも非常に評価が高い感動的なものとなっている。このイベントのためだけに、本作をプレイしても良いほどだ。
また、ヨコオ氏が関わる多くの作品で見られる、「ウェポンストーリー」は本作にもあり、ウェポンストーリーで語られる前作関連のワードなどもあるので、ウェポンストーリーの中でも特に筆者が好きな、「焔の簧」と「カイムの剣」のウェポンストーリーを紹介したい。
その竜は死を前に後悔していた。
なぜ卑しい人間の子を助けようなど思ってしまったのか……。
しかも……それが竜狩りの罠とは情けない……。
意識が朦朧とする中、何者かが目の前で戦っている……次に目を覚ますと竜は手当てを受けていた。
竜の命を救ったのは人間だった。
その人間は王を目指していた。
竜には興味のない話だが、この男なら相応しいのだろうと思った。
その時。
男の胸に矢が突き刺さる。
竜狩りの連中が仲間を呼んだのだ。
不意打ちを受け、倒れる男……。
応戦するも矢を受けた身体。
次第に男の動きも鈍くなる。
そこへ……肉の裂ける音……なんと! 竜は己の舌をその爪で引きちぎっていた。
男はその舌を剣に突き刺すと、剣先から灼熱の炎が吹き出した。
辺りの竜狩りどもは一瞬にして灰となる。
『人間ごときに我が命を捧げるのは我慢ならぬが、おぬしを死なせてまで生きようとは思わん……』
竜は……その場で目を閉じた……。
僅かな時間であったが竜と男の間に種族を超えた友情があった。
後に……男は“焔の簧”を手に王となった。
(焔の簧 ウェポンストーリー)
十八年前。
世界が破滅に瀕した時、一人の男と一匹の竜が神に抗った。
男は命を賭して戦い、竜は男の為に世界を救った。
残された男は失った半身と心焦がす赫怒の残滓にすがるように、荒廃した世界を彷徨った。
その放浪には、神の器として破滅を巻き起こした幼き少女が伴われた。
竜の命を用いた封印を改変し、身を捧げた竜への負担を倍増させた老司祭は、かつての仲間の一人だった。
竜の苦しみの思念を感じ取った男の心は大きく揺らいだ。
その隙を突いた少女は、男の不意をついて逃走。
男は再び訪れた孤独の中で、憎悪をたぎらせる。
空虚だった男の心は、灼熱の炎で満たされた。
男は竜を裏切った老司祭を襲い、命乞いを聞き捨てて一刀のもとに両断した。
最後の儀式に使われる男をも斬り、封印改変を阻止した……はずであった。
しかし封印は組み替えられてしまった。
竜の意識は苦痛に引き裂かれ、千々と消えていった。
そして男は世界より竜を選んだ。
封印の鍵が次々に打ち砕かれ、ついに男は竜と再会する。
世界の破滅が再び迫ってきている。
だが男と竜は満ち足りていた。
二人はもう二度と別離の苦痛を味わいたくなかった。
二人が選んだ答えは……。
そして滅びゆく世界に、男の大剣が残された。
(カイムの剣 ウェポンストーリー)
こういった面からも、個人的には「DOD2」というよりも「DODファンサービスディスク」みたいな位置づけのゲームだと思っている。
ちなみに、キャラクターデザインは前作と同様、藤坂公彦氏。美麗なイラストは本作でも健在で、眺めているだけで幸せな気持ちになれる(そのキャラクターの中身はぶっ飛んでいるが)。
前作をベースに、より遊びやすくなったアクションバトル
本作のバトルは地上戦、低空戦、上空戦に分かれている。
全体的にアクションとしては操作感がイマイチだった前作に比べて、基本技だけでも多くの技が追加され、武器種ごとのアクションも増えた。戦況によって様々な技を使い分けることができるようになったので、アクションゲームとして非常に楽しめる作品に仕上がっている(もちろん、20年前の作品なので、現在プレイすればまだまだ粗いところだらけではあるのだが)。
ドラゴンに乗って戦う低空戦や上空戦も、プレーヤーのやれることが増え、戦略性が増した。逆に言うと前作のようなゴリ押しはできなくなっているので、アクションが不得手なプレーヤーにとっては難しくなってしまった。
特に「DOD」シリーズは周回してすべてのエンディングを見てナンボなタイトルであるのに、周回するごとに敵がどんどん強くなっていき、アクションをかなり頑張らないとすべてのエンディングを回収するのが難しいほどになってしまったのだ。
しかしアクションゲームとしてのやりごたえは非常に充実したので、ここはストーリーだけ見れればいいプレーヤーと、ゲームとしてより楽しみたいプレーヤーとで、どうしても評価が分かれてしまうところなのだが、筆者はバトルについては「DOD」よりも圧倒的に「DOD2」派である。まあ20年前の若かった自分の反射神経は戻ってこないので、今ではもうクリアできる自信はないのだが。
アクションの腕に自信がある人は、ぜひ最後のエンディングまで目指して周回を重ねてみてほしいところだ。
「DOD」シリーズの中で唯一救いのあるエンディング
「DOD」シリーズでは様々な条件を満たすことでいくつかのエンディングへと分岐するのが特徴だが、本作では分岐ではなく周回を重ねることでエンディング1~3まで、3つのエンディングが用意されている。
こちらは言うまでもないがネタバレの嵐なので、改めてプレイする予定のある人は閲覧に注意してほしい。
なお、本作のエンディング3は、「DOD」シリーズ唯一のハッピーエンドとなっているので、そこはぜひ見てほしいところだ。
エンディング1
神を貶め世界の覇権を取り戻そうとする神竜族。レグナは特殊な存在であるノウェを、神を倒す切り札として計算づくで育てていたのだ。その事を知ったノウェは、レグナと袂を分かつ決意をし、死闘の末にレグナを倒す事に成功する。
しかし神の存在はそのまま残る事になり、封印の女神(アンヘル)を失った世界は、崩壊の道を辿ることとなる。そこへ新たな女神として覚醒しつつあったエリスが封印の女神となることで世界の崩壊は止まるが、それはこれからも封印の女神という生贄が必要なことを意味していた。
エンディング2
「神が居なくなれば封印の連鎖はなくなる」という神竜族の計画に賛同できずにいるノウェ。だが、エリスが世界の崩壊を止める為に、封印の女神になろうとしている事を知ったノウェは、神の玩具である骨の棺(再生の卵)を破壊する事にする。
だが、骨の棺は自身を守るためにマナと同化し、ノウェ達の前に立ちはだかる。ノウェと骨の棺の戦いの最後、取り込まれていたマナが命を賭して骨の棺を破壊する。
マナの命は永遠に失われてしまった。ノウェは再び騎士団を結成し、神竜族達と共に再び神との決戦に挑むことにするのだった。
エンディング3
封印の女神という呪縛を解く為に、骨の棺を破壊するノウェ。誰の犠牲もなく骨の棺の破壊に成功したが、神竜族の計画にノウェは疑いを抱く。そんなノウェの態度に、敵意を向けてくるレグナ。苦しく激しい戦いの末に、ノウェは神竜族を打ち倒した。
神も竜もいない新しい世界で、ノウェはマナ、エリス達と共に生きていくという、シリーズ唯一のハッピーエンドとなった。
「DOD」三部作ボックスがほしいです
公式攻略本では、前作「DOD」が絶望であったなら、本作は希望である、と記されている。実際、本作はシリーズの中でも非常に異色な作品となっているが、とことん人の心を叩き落した前作(※誉め言葉)から、本作では前を向いて立って歩こうという人の世界の強い意志を感じられる作品へと仕上がっており、さらに前作からゲームとしての進化を著しく遂げている点からも、筆者は非常に評価したい一作となっている。特に癖が強い各登場人物たちは、きっと多くのシリーズファンが気に入るものになっている。
とはいえ、現状PS2でしか遊べない作品なので、そろそろ「DOD」1~3までをまとめた三部作HDリマスターボックスなどが欲しいと思う、今日この頃である。この20年の間にアラフィフになってしまった筆者はもうあの強さの敵には勝てないと思うので、周回を重ねると敵が強くなる仕様は緩和してほしいところではあるのだが。
それでは、ここまで読んでいただき、本当に、本当にありがとうございました。
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